同期が、上司から褒められていた。
自分より後に入った人が、一人で仕事を任されるようになっていた。
会議では、同僚がすぐに意見を出している。
その横で、自分は何を言えばいいのか分からない。
そんな場面が続くと、
「みんな普通にできているのに」
「なんで自分だけできないんだろう」
と思うことがあります。
誰かから、
「あなたは仕事ができない」
と言われたわけではない。
それでも、周りを見るたびに、
自分だけが取り残されているような気がする。
こういうときって、
仕事ができないことそのものより、
周りと比べるたびに、自分の足りないところを見つけてしまうことの方が苦しかったりします。
周りを見れば見るほど、自分だけ遅れているように感じる
職場では、
人の成長がよく見えます。
「あの人が新しい案件を任された」
「〇〇さんが売上目標を達成した」
「最近、あの人かなり仕事できるようになったよね」
こういう情報は自然と入ってきます。
でも、
自分自身の成長は、意外と見えません。
昨日より資料を少し早く作れるようになった。
以前なら一時間悩んでいたことを、十五分で相談できた。
前よりミスに早く気づけるようになった。
こういう変化は、
毎日自分と一緒にいるからこそ、
なかなか気づきません。
一方で、
他人の成長は、
「任された」
「褒められた」
「成果が出た」
という分かりやすい形で見える。
だから、
他人の完成した結果と、自分の途中経過を比べてしまう。
すると、
周りはどんどん成長しているのに、
自分だけ止まっているように感じます。
人と比べること自体は、悪いことではありません
心理学では、
自分と他人を比べて自分の状態を確認することを「社会的比較」と呼びます。
人と比べること自体が悪いわけではありません。
「あの人みたいになりたい」
「こういうやり方もあるんだ」
と、自分の成長につながることもあります。
でも、
自信をなくしているときの比較は、
少し違います。
周りを見るときに、
なぜか相手の「できているところ」ばかりを見る。
そして自分を見るときには、
「できていないところ」ばかりを見る。
たとえば、
同僚が会議で堂々と話しているのを見る。
その人が、
会議の前にどれだけ準備していたかは分からない。
以前は発言できずに悩んでいたかもしれない。
別の仕事では苦手なことがあるかもしれない。
でも、
見えているのは、
堂々と発言している今の姿だけです。
一方で自分については、
昨日のミスも、
今日質問できなかったことも、
資料作成に時間がかかったことも、
全部知っています。
これでは、
比べれば比べるほど自分が不利になります。
「自分だけできていない」と思っていた頃があります
私も、
周りの人を見て、
「自分は全然できていないな」
と思うことがありました。
特に苦しかったのは、
同じくらいの年齢の人や、
自分より若い人が成果を出しているときです。
年上のすごい人なら、
「経験が違うから」
と思える。
でも、
同年代の人が評価されていると、
急に逃げ道がなくなる。
「あの人にできるなら、自分にもできないとおかしい」
そんなふうに考えてしまいます。
だから、
相手が成果を出すたびに、
なぜか自分の評価まで下がったような気持ちになる。
でも、よく考えたら、
相手が一つ仕事を成功させたことで、
昨日までできていた自分の仕事が、
突然できなくなったわけではありません。
誰かの評価が上がったことと、自分の価値が下がったことは、本来まったく別の話です。
それなのに、
頭の中では、
勝手に同じランキングに並べてしまうことがあります。
仕事は、全部できる人から評価されるわけではない
「仕事ができる人」という言葉は、
かなり曖昧です。
話すのがうまい人。
仕事が速い人。
ミスが少ない人。
営業成績がいい人。
周囲との調整が得意な人。
細かいところによく気づく人。
困ったときに相談できる人。
全部違います。
だから、
一つの場面だけを見て、
「自分より仕事ができる」
と決めるのは、
本当は少し乱暴です。
たとえば、
会議ではすぐに発言できないけれど、
資料を丁寧に作れる人もいる。
判断は少し遅いけれど、
一度覚えた仕事を安定して続けられる人もいる。
人前で話すことは苦手でも、
一対一なら相手の話をよく聞ける人もいる。
自信をなくしていると、
自分が苦手な土俵ばかりで、
自分を採点してしまいます。
でも、
苦手なところがあることと、仕事ができないことは同じではありません。
自信は「自分はすごい」と思うことではない
自信を取り戻そうとすると、
「もっと自分を肯定しないと」
「自分の長所を見つけないと」
と思うかもしれません。
でも、
無理に、
「自分は仕事ができる」
と思い込む必要はないと思います。
心理学には「自己効力感」という考え方があります。
簡単に言えば、
「自分なら、この行動はできそうだ」
と思える感覚です。
これは、
「自分は優秀だ」
という感覚とは少し違います。
たとえば、
「私は仕事ができる」
と思えなくても、
「明日は分からないことを一つ質問できそう」
なら十分です。
「プレゼンが得意」
と思えなくても、
「次の会議では一回だけ発言してみよう」
と思える。
こういう小さな「できそう」が積み重なることで、
少しずつ自信は戻ってきます。
比べるなら、昨日の自分と比べてみる
人と比べる癖を、
今日から完全になくすことは難しいと思います。
だから、
比べそうになったとき、
もう一つだけ比較対象を増やしてみてください。
三か月前の自分です。
以前より、
少し早くできるようになった仕事はないか。
以前なら上司に聞いていたことを、
自分で判断できるようになっていないか。
前より、
相談するタイミングが早くなっていないか。
以前より、
ミスしたあとに立て直すのが早くなっていないか。
大きな成果じゃなくて大丈夫です。
成長は、
昇進や売上のような分かりやすい形だけで起きるものではありません。
誰にも褒められていないけれど、
自分だけが知っている変化もあります。
そこを見つけてあげてほしいと思います。
今日、一つだけできたことを書いてみる
自信をなくしている人に、
「自分のいいところを十個書いてください」
と言っても、
たぶん苦しくなるだけです。
だから、
もっと小さくていい。
今日できたことを、
一つだけ書いてみてください。
「期限までに資料を出した」
「分からないことを一回質問した」
「ミスしたけど、その日のうちに報告した」
「今日は遅刻せず会社に行った」
それくらいで大丈夫です。
「こんなの誰でもできる」
と思うかもしれません。
でも、
今やりたいのは、
自分を特別な人間だと思い込むことではありません。
自分ができていることまで、見えなくならないようにすることです。
周りを見る癖が強くなると、
自分のできていることは、
本当に見えなくなります。
だから、
意識的に一つだけ拾います。
周りが前に進んでいても、自分が後ろに下がったわけではない
職場には、
自分より仕事が速い人もいます。
自分よりコミュニケーションが得意な人もいます。
自分より成果を出している人もいます。
たぶん、
これからもいます。
そのたびに、
少し焦ることもあると思います。
でも、
誰かが前に進んだからといって、
あなたが一歩後ろに下がったわけではありません。
周りの人には、
周りの人の進み方があります。
自分には、
自分の進み方があります。
大事なのは、
誰より早いかではなく、
昨日の自分より、ほんの少しでも前に進めているか。
今はまだ、
「自分は仕事ができる」
と思えなくてもいいと思います。
まずは、
「昨日より一つできたことがある」
くらいからで十分です。
自信は、
突然手に入るものではなくて、
そういう小さな証拠を、
自分の中に少しずつ増やしていくことで戻ってくるものだと思います。
次に読むなら
もし、
「自分が仕事ができない」と感じるきっかけが、
仕事での失敗を何日も引きずっていること
なら、
次は、
「仕事の失敗を引きずる人へ|何日も思い出してしまう理由と立ち直り方」
を読んでみてください。
一つの失敗を、自分の能力全体の評価に広げないための記事です。
