新しい仕事を任された。
説明を聞いた瞬間、
「自分にできるかな」
と思う。
会議で意見を求められた。
何か言おうとは思うけれど、
「変なことを言ったらどうしよう」
と黙ってしまう。
少し難しそうな仕事を見ると、
始める前から、
「たぶん自分には無理だ」
と思ってしまう。
こういうとき、
本当に能力が足りないとは限りません。
まだ何もやっていないのに、
「自分にはできそう」という感覚だけが、先になくなっている
ことがあります。
自己効力感とは「自分ならできそう」と思える感覚
心理学には、
自己効力感
という考え方があります。
難しく聞こえますが、
簡単に言えば、
「自分なら、この行動をやれそうだ」
と思える感覚です。
ここで大切なのは、
「私は優秀だ」
と思うことではありません。
「私は何でもできる」
と思うことでもありません。
たとえば、
「プレゼンが得意だ」
と思えなくても、
「事前に準備すれば、5分くらいなら話せそう」
と思える。
「仕事ができる人間だ」
と思えなくても、
「この資料なら、先輩に確認しながら作れそう」
と思える。
この、
「なんとかできそう」
が自己効力感です。
自信がないと、行動する前に諦めやすくなる
同じ仕事を任されても、
「自分ならできそう」
と思っている人と、
「どうせ自分には無理」
と思っている人では、
最初の行動が変わります。
できそうだと思っていれば、
まずやってみる。
分からなければ調べる。
困ったら相談する。
失敗しても、
「次はここを変えよう」
と考えられる。
でも、
最初から、
「自分には無理」
と思っていると、
行動そのものが怖くなります。
質問するのをためらう。
発言しない。
新しい仕事に手を挙げない。
失敗すると、
「やっぱり自分には無理だった」
と思う。
すると、
ますます行動しなくなる。
そして、
経験が増えないから、
さらに自信がなくなる。
「自信がないから動けない」
↓
「動かないから経験が増えない」
↓
「経験がないから、さらに自信がなくなる」
という流れに入りやすくなります。
自信がついてから行動する、では遅いことがある
以前の私は、
自信って、
何か大きな成果を出したら手に入るものだと思っていました。
仕事ができるようになる。
結果を出す。
周りから評価される。
そうすれば、
自然と自信がつく。
でも実際は、
自信がない状態で、
大きな成果を出すのは難しいですよね。
だから、
順番を少し変えた方がいいと思っています。
自信がついたら行動するのではなく、
小さく行動して、その証拠から自信をつくる。
いきなり、
「仕事ができる人になろう」
としなくていい。
その前に、
「今日、一つ質問できた」
「昨日より10分早く資料を作れた」
「分からないことを放置せず相談できた」
そういう、
小さな「できた」を増やしていく。
自己効力感を育てるなら、小さな成功体験から
自己効力感を高めるうえで、
特に大きいのが、
自分自身が「できた」と感じる経験です。
でも、
ここでよくやってしまうのが、
成功の基準を大きくしすぎることです。
「営業成績で1位になる」
「上司から評価される」
「仕事を完璧にこなす」
「転職を成功させる」
これだと、
達成するまでずっと、
「まだできていない自分」
になってしまいます。
だから、
もっと小さくします。
「今日はお客様に一件電話する」
「会議で一回発言する」
「分からないことを午前中に質問する」
「提出前に一回確認する」
これなら、
今日中に、
「できた」
という証拠をつくれます。
自己効力感を取り戻したいときは、
成功体験を大きくするより、成功の回数を増やす。
その方が始めやすいと思います。
「こんなの誰でもできる」は、一度置いておく
小さな成功体験を見つけようとすると、
必ず出てくる言葉があります。
「こんなの、できて当たり前」
です。
期限までに仕事を出した。
「普通でしょ」
質問できた。
「そんなの誰でもできる」
今日は遅刻せず会社に行った。
「社会人なら当たり前」
そうやって、
自分のできたことを、
片っ端から無効にしてしまう。
でも、
自信をなくしているときに必要なのは、
自分を特別すごい人だと思うことではありません。
「自分にも、できていることがある」
という証拠を消さないことです。
誰でもできることでも、
今日の自分ができたなら、
それは一つの「できた」です。
昨日の自分より少しだけ前に進めばいい
自信がなくなると、
周りを見ます。
同僚はもっと仕事が速い。
同期はもう昇進している。
後輩の方が評価されている。
すると、
自分のできていることより、
足りないところばかり見えてきます。
でも、
自己効力感を育てたいときに見る相手は、
できれば、
昨日の自分
くらいでいいと思います。
昨日は、
質問するまで一時間悩んだ。
今日は30分で聞けた。
以前は、
ミスを隠したくなった。
今日は早めに報告できた。
前は、
資料を全部一人で抱えていた。
今日は途中で先輩に見てもらった。
派手ではありません。
誰かから、
「成長したね」
と言ってもらえないかもしれない。
でも、
自分の中では、
確実に一歩進んでいます。
失敗した日は「できなかったこと」しか見えなくなる
仕事でミスをすると、
自己効力感は一気に下がることがあります。
昨日まで普通にできていたことまで、
「自分は全部ダメなのかもしれない」
と思えてくる。
でも、
一回失敗したからといって、
昨日まで身につけたものが全部なくなったわけではありません。
たとえば、
10回うまくできた仕事で、
11回目に失敗した。
それなのに、
失敗した1回だけを見て、
「自分にはできない」
と結論を出してしまうことがあります。
本当は、
10回できたという証拠も残っています。
失敗した日ほど、
できなかった一回だけで、
自分を評価しないこと。
これはかなり大切だと思います。
「できるか」ではなく「何ならできそうか」を考える
自信がないとき、
「できますか?」
と聞かれると、
答えが重くなります。
「できます」
と言い切るほど自信はない。
「できません」
と言うのも違う。
そんなときは、
質問を少し変えます。
「今の自分なら、どこまでならできそうか」
たとえば、
プレゼン全部は不安。
でも、
資料を作るところまではできそう。
一人で案件を回すのは不安。
でも、
途中で上司に確認しながらならできそう。
会議で積極的に発言するのは難しい。
でも、
事前に一つ意見を用意しておけば言えそう。
0か100かで考えない。
できないことの中から、できそうな部分を探す。
これだけでも、
行動へのハードルが下がります。
今日から、「できたメモ」を一つだけ残す
自己効力感を取り戻したい人に、
一つやってほしいことがあります。
一日の終わりに、
今日できたことを一つだけ書く。
本当に一つで大丈夫です。
「資料を期限までに出した」
「苦手な人にも挨拶した」
「一つ質問できた」
「今日は仕事を家まで持ち帰らなかった」
「昨日より少し早く寝た」
立派な成果でなくて構いません。
むしろ、
小さい方が続きます。
一週間続ければ、
7個の「できた」が残ります。
一か月なら、
30個です。
自信がなくなった日に、
それを見る。
すると、
「自分は何もできていない」
という言葉に対して、
少なくとも、
30個くらい反論できるようになります。
「自分にはできない」を、いきなり「できる」に変えなくていい
今、
「自分にはできる気がしない」
と思っているなら、
無理に、
「自分ならできる!」
と思い込まなくても大丈夫です。
信じられない言葉を、
自分に言い聞かせても苦しくなります。
まずは、
「少しならできるかもしれない」
くらいでいい。
自信は、
気合いでつくるものではなく、
小さな行動のあとに、
「できた」という証拠を集めていくことで、
少しずつ戻ってきます。
仕事で転んだ日に、
いきなり走り出す必要はありません。
まず立つ。
一歩だけ歩く。
昨日より少し前に進む。
その繰り返しで、
「自分にもできそう」
という感覚は、
また戻ってくると思います。
次に読むなら
もし、
自己効力感が下がったきっかけが、
周りと比べて「自分だけ仕事ができていない」と感じること
なのであれば、
次は、
「自分だけ仕事ができないと感じる人へ|周りと比べて自信をなくしたときの考え方」
を読んでみてください。
他人の成果ではなく、
自分自身の成長を見つけ直すための記事です。

